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February 17, 2018

福岡県獣医師会報に投稿

第46号 2018年1月


私の知らなかった獣医師の制度

 

                    両筑支部長 森田文弥

                  (森田獣医科病院、小・大動物部会員)

 私が知らなかっただけで、当然、以下のことをご存じのかたも多いはず。

 

 県獣から加計が獣医師の教官を募集しているという通知がこの問題を知る最初のきっかけだった。「ふーん、新しく獣医の大学ができるのか。」くらいにしか思っていなかった。確か、共同獣医学部が云々で、大学数を減らそうとしていたはずなのに、と。その後、森友から加計に話が及んで、雲行きが怪しいなと、思っていた頃、マスコミも騒ぎ始め、表舞台にでてきた。H29/4/4 北村前衆議員獣医師会顧問のIWJのロングインタビューで石破4条件の閣議決定、日本の大学の講座数、公務員獣医師の需給、アメリカの獣医師の水準 などを知った。  今治の市民の呼び掛けからH29/6/2 「今治加計獣医学部問題を考える会」の賛同者として私も名を連ねた。世の中やマスメディアでは獣医師の需給まではでてくるが、 その背景としての獣医学の国際水準について殆んど出てこないというかどうでもいい扱い。一般に獣医師というと町の犬猫のお医者さんのイメージで、大動物の臨床のイメージは、あまりない。ましてや公衆衛生や行政については尚更の感がある。私はS59年卒でどさくさに紛れ、積み上げ式で、大学院の試験も受けて修士論文を書くはめになった。浪人しなければ親孝行出来たのだが、それはそれとして、毒性学や生物統計学、修論の書き方、英文献の調べ方など、幅広く学べて大変役立っている。その後の59年から大学教育は一貫6年制になった。

 

日本学術会議の「わが国の獣医学教育の抜本的改革に関する提言」H12/3/27によると、(実に17年も前の事だが今も殆んど変わらないことは北村顧問の話で分かる。)

 

 獣医系大学の数はアメリカ27校、カナダ校4校、イギリス6校、フランス4校、ドイツ6校、イタリア10校、スウェイデン、ノルウェイ各1校、オーストラリア5校、韓国10校、タイ3校、マレーシア1校等であるのに対し、わが国では16校。欧米諸国の獣医学修業年限は、各国の事情によって多少異なるがおおむね67年で、そのうち専門教育は45年であり、臨床や応用獣医学の実務教育が中心。1998年にEU諸国は獣医学教育基準の統一が実現した。獣医学部に入学する学生は、米国では多く獣医学の専門教育を受ける以前に理系または生物系あるいは教養の単位を取得することが義務づけられている。獣医学部に入学して専門教育45年のうち、23年間は動物病院や牧場あるいは獣医公衆衛生の現場での実務教育が行われており、獣医学部を卒業して獣医師の資格を得た卒業生は、社会に出て直ちに役立つ獣医師として、実社会で十分に活耀できる程度の教育がなされている。欧米の獣医学とわが国の獣医学教育で大きく異なるのは、講義時間数と実習または演習時間数である。

欧米では総時間数の約13が講義時間数であり、23が実習または演習時間数である。このような獣医学教育はDepartment またはVeterinary Schoolとして独立しており、日本のように獣医学科単位の教育体制をとっている国は他にみられない。また、実務教育を行うための教育施設・設備あるいは教員や教育支援体制が充実しており、教育・研究にかかわるスタッフは学生数に対して約2倍程度である。そして実務教育は小人数制でrotation system による実地教育が多い。また、欧米ではインターン制度、レジデント制度あるいは専門医制度が確立しており、高度な教育体制が整備されている。さらにこれを支援する獣医看護士制度も確立されている。米国における獣医師資格(D.V.M)を取得するにはUS board とState boardに合格しなければならない。

 ヨーロッパては獣医科大学の卒業条件を満たせば国家試験がない国が多い。しかし、いずれも実務教育の成果に重点を置いた試験または卒業認定はかなり厳しいものである。その背景には動物の伝染病予防、食糧や動物あるいは人の交流による伝染病の防御、人獣共通感染病の防御、新興・再興性感染病の防御、コンパニオンアニマルの高度医療、野生動物保護等について、国際的に共通した学術をもって対応しなければならない状況下にあるからである。中国、台湾、韓国そして日本では、現状の獣医学教育体制である限り、実務的な臨床または獣医公衆衛生等の応用獣医学教育に大きな格差があり、これが転換されない限り国際的な獣医学教育の統一化に対応できない状況にある。したがって今後EU 諸国または北米、カナダ等から獣医学教育の国際化を迫られる可能性が高い。また、先進国を自認する日本の獣医学教育が欧米諸国の獣医学教育に比較して著しく劣ることは、国際的な対応について非難を受けるだけでなく、わが国における動物医療の高度化、動物性食品の安全性確保、獣医公衆衛生・環境衛生、野生動物医学あるいは動物愛護に関する教育レベルの低下が、日本人の生活に大きな影響を及ぼすことは欧米諸国の例をみても明らかであり、日本の社会文化の低さが問われることにもなる。動物医療以外に獣医公衆衛生分野、環境衛生分野、人と動物の関係分野あるいはアニマルセラピーや動物愛護関係分野ならびにパラメディカル分野においても、獣医師として高度な学識をもつ専門的な活難が期待されるようになった。わが国における獣医学教育をこの基準に合わせて国際化しないと、今後における諸外国との畜産物や動物性食品の検疫あるいは獣医学情報等の交流に大きな支障を来すおそれが生じてきている。(だいぶ長文ですが引用ここまで)

 

 米国のシステムは、日本で言えば高卒後に別の大学を卒業後あらためて獣医学部に入学するようなものか。私の学生時代にオーストラリアの獣医大学ではコンピュータの講義もあると教官から知った。修士論文では、統計処理の為に、パソコンを講座に購入していただいた。USBでもディスクでもなくカセットの記憶装置だった。自分でBASICを学びプログラミングをした。前の日に入力したデータ処理に一晩かけ、翌日エラーが出て、がっかりするのを何度も繰り返した。海外との獣医学教育格差を間近に感じた。

 岩盤規制と言う人がいるが誰のための規制なのか。獣医師の利益保全のためなら行政庁から公益性を認められた公益社団法人の必要もない。今だけ金だけ自分だけという分かりやすい言葉がある。目の前のことだけ、自分の身内だけで、他の人や後世のことも省みず、むしるだけむしりとる経済のグローバリゼーションでは、野生動物や地球環境の保全、ラムサール条約やワシントン条約も守れない。職業としての行政長が、金を稼ぐことは理解できないでもないが、やり過ぎると後世に禍根を残すことにならないか。口蹄疫の大災害の時、私自身は直後に日獣から登録し宮崎に入るつもりだったが現地に断られた。時の大臣にウイルスのことを細菌と呼ばせても訂正もさせない側近の農水省、法を曲げて種雄牛を移動させた知事、畜産家による賠償責任請求を退けた司法など、起こるべきではなかった損害は責任ある獣医師の不在、社会的地位の低さ、それに対する信頼制の欠如が、欧米に比べるとあるのではないか。当時FAOが専門家を派遣する用意があったが政府はこれを断っていた。私は、2010ー5ー19家伝法改正に対するパブリックコメントを送付した。

「内容:口蹄疫対策でFAO専門家チーム派遣を断ったのは?

内容:the mainichi dairy news, may 21 Govt to compensate farmers for losses due to foot-and-mouth diseaseによると政府はFAOの専門家チームを断ったとありますが、今の状態で終息に向かうには実務経験者が必要ではないでしょうか?日本の専門家チームは現場のことが良く分かっていないのでは、無いでしょうか?殺処分を延期しての他の対策はあり得ない。ウイルスは生きた細胞が無ければ増殖しないのだから、埋却場所が無くとも、殺処分が24時間以内に行うことが、防疫指針に書かれて無いことも不備だと思われます。

返信2010-6-12【回答】お問い合わせ頂きありがとうございます。お問い合わせのFAOからの専門家派遣の件についてご説明します。FAOからは、在イタリア日本大使館を通じ、口蹄疫に関する技術的助言及び新たな地域での発生防止のための調査ミッションの派遣を行う用意がある旨の連絡がありました。我が国から提案に対し、感謝の意を表するとともに、まずは感染拡大防止に全力を挙げ、今後必要に応じて助言を求める旨回答しました。」

ここに見られるのは日本の獣医師の国際比較における基礎、臨床、応用のすべてに見みられる実践、実習、演習の圧倒的な不足ではないか?容易に見てとれる結果の予測、感染防止拡大の防止について判断力、責任性、職氏名の欠如。政治決断をさせるだけの説得力ある科学的知見を示すべき官僚、行政職の力量不足ではないか。現代社会に対する疑問が生じた。

 

 今秋まで1年だけ動物看護師の学校で非常勤講師をした。動物関連法規の講義もしたが、これも非常に勉強になった。法体系の序列、憲法、法律、政令、省令、条例。ここに条約が入ると法律を変更する必要があったりする。政令は法律を越えるものではないが、自ら決めた閣議決定も踏襲しない官邸。と畜場法では獣医師の責任は非常に重い。病畜を解体し食すことになれば国民の命を失うこともあるから当然のこと。一介の開業医でしかない私も劇薬は施錠しなければならないし、私の検案書で炭疽の誤診でもあれば大問題になる。法を守るも無視するも個人の見識。憲法を守らない政府が改憲すればその改憲法さえ守らないのは容易に想像できる。動物看護師の講義で、法令違反の罰則でもっとも重い死刑について話した時、生徒の反応は、冤罪で命を失う事に対する驚きを隠さなかった。誤りは正せば良いが取り返しがつかなくなってでは再起不能、撤退しなければならない。

 安保関連法の問題で政治についても少し理解を深めた。もともと政治、経済は雑多で難しく、報道では、各々の事象を理解している前提で新しい事象について知らせているので基礎的な事が解らないとちんぷんかんぷんになる。この2年じっくり取り組み、だいぶ分かるようになった。余りに政治的に無関心でいたことを反省している。未だにFATTPPなど経済は疎いが。

 

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